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プロダクト企画の再定義!AIと加速させる 企画プロセスとは?

2026/4/19

AI時代、企画と開発はこう変わる

分布収束・サブエージェント・高速プロトタイピングの実践

開催日: 2026年3月
登壇者: 文分邦彦(株式会社GNUS 代表取締役)、荒金駿(プロジェクトマネジメントチーム マネージャー)

本記事は、株式会社GNUSが2026年3月に開催したセミナー「AI時代の企画と開発はどう変わるのか」の内容をもとに構成されました。内容は当時のものであり、その後の技術革新や社会情勢の変化により、現在とは状況が異なる場合があります。


AIを使って企画や開発を進めようとすると、「なんとなくAIっぽくなってしまう」という壁にぶつかることはないでしょうか。似たようなアイデア、どこかで見たようなデザイン──その原因と解決策を、GNUSが実践している手法とともに解説したセミナーをレポートします。

今回のセミナーは5つのテーマで構成されており、企画フェーズでのAI活用から、プロトタイピング、動くプロダクトを使った提案、実開発への接続、そして社内ツールの内製化まで、企画から実装までを一気通貫で語る内容です。


第1章:「AIっぽい」が生まれる本当の理由──分布収束とは何か

文分邦彦(株式会社GNUS 代表取締役)

AIは「安全な答え」を出そうとする

AIプロトタイピングが一般化するにつれ、ある共通の課題が浮かび上がってきました。「なんとなくAIっぽくなってしまう」という問題です。

私はこの現象の本質を「分布収束(Distributional Convergence)」という言葉で説明しています。例えば「人の顔を描いて」と頼むと、みんなが想像する安全で平均的な顔のイラストになりがちです。AIも同じで、要件を満たす"安牌"を出そうとします。

AIはトークン(言葉のかたまり)を予測する仕組みで動いており、学習データの中で統計的に「よく出てくるパターン」を選ぼうとします。これまで見たことのないデザインや、競合と差別化された企画を作るうえでは、この「ありがちなものを作ってしまう」性質がネガティブに働きます。

分布収束を回避する2つの方向性

では、どうすれば「平均」から脱出できるのでしょうか。私は2つのアプローチを考えています。

① 人が介入してAIを明確な方向に引っ張る どんなに優れたAIでも、方向性を与えるのは人間の役割です。「こういう雰囲気にしたい」「この競合とは違うアプローチで」という明確な意図をプロンプトに込めることで、収束先を意図的にずらすことができます。

② 分布収束しないようなシステムやプロンプトの仕組みを作る 人の介入に頼るだけでなく、構造的に「無難な回答に落ち着かせない」設計をすることも重要です。その代表例が、次章で紹介するサブエージェントの活用です。


第2章:企画フェーズ──AIと「壁打ち」する仕組みをどう作るか

荒金駿(PMチーム マネージャー)

単一AIに頼ると企画は「丸く」なる

私はコンサルティング出身で、エンジニアバックグラウンドは持っていません。それでも、AIを活用したプロトタイプ作成を積極的に推進しています。企画フェーズにおいて、私が最も感じている課題はこうです。

単一のAIにアイデア生成を任せると、無難で平均的な提案しか出ません。良い企画というのは、チームメンバーとのディスカッションの中で、批判的な意見や別視点の意見と壁打ちを重ねることでブラッシュアップされて生まれるものです。

生成AIは「肯定的な"それっぽい案"しか出さない」という性質があります。「そもそも目的は達成できるのか?」「顧客に本当に満足してもらえるか?」という本質的な問いを立てる力が、AIには欠けています。

良い企画は「整理」ではなく「壁打ち」から生まれる

企画の質を高めるのは、情報の整理ではなく、批判・検討・代替案を繰り返す「壁打ち」のプロセスです。しかし人は自案を肯定しがちで、良い壁打ち相手を常に確保するのは難しいのが現状です。

サブエージェントで「空気を読まない」多視点を作る

そこで私たちが開発・活用しているのが、サブエージェントという壁打ち環境です。

コンテキストや要件を正しく理解し全体をコントロールする「メインエージェント」とは別に、まったく異なる役割と視点を持った複数の「サブエージェント」を用意します。生成AIにも「自案を肯定しがちになる」傾向があるため、あえて別のエージェントとして切り離し、「良い意味で空気を読まない」設計にすることが重要です。

電通グループのトップクリエイティブ視点、コンサル・開発の知見、プロフェッショナルエージェントなど、複数の専門的な視点を持つサブエージェントがメインエージェントの企画をレビューし、「光る要素」を拾い上げます。

ヒューマンループで企画を「尖らせる」

各サブエージェントが異なる角度から意見を出した後、その中で光る要素があれば、人間側からフィードバック(ヒューマンループ)を与えます。「これは面白い」「この方向をさらに深掘りして」という人間の判断をループに組み込むことで、企画はどんどん尖っていきます。

文分より補足: 同じエージェントの中で処理すると、辻褄を合わせて丸い答えになってしまいます。だからあえてエージェントを別にして、最初の前提をフォローしすぎないように設定しています。方向性を決めた上で、好きな数だけ別視点のレビュアーを叩かせる(意見を出させる)仕組みです。

私たちが強調したいのは、「AIは企画を代行するものではなく、企画を多視点で磨くための環境として使う方が強い」という考え方です。企画の質=磨き込みの回数+視点の幅という式が、私たちのAI活用哲学を端的に表しています。


第3章:プロトタイピングフェーズ──「荒くても早く」が新時代の勝ちパターン

荒金駿(PMチーム マネージャー)

従来の開発との決定的な違い

企画が固まったら、次はプロトタイピングです。ここでも私たちのアプローチは従来とは大きく異なります。

従来の開発では、詳細な要件定義をまとめ、エンジニアが構成を検討し、最初から完成品を目指すという流れが一般的でした。フィードバックが得られるのはかなり後の工程になり、手戻りのリスクも高くなります。

私が推進しているのは「荒くても早く作って磨き込んでいく」スタイルです。

プロンプト前の要件整理が精度を決める

何でも荒く作るのではなく、まず生成AIに要件定義をきちんと読み込ませることが大切です。要件整理なしにプロンプトを投げると、初回出力でAIっぽさが全開になり、後工程での手戻りが多発します。要件整理ありなら、初回出力の精度が上がり、ブラッシュアップが格段に楽になります。

「触れるもの」を早い段階で作る

要件を読み込ませたら、Google AI StudioやLovableなどを使って簡易的に触れるモックを作成します。実際に触れて確認できたら、Claude CodeやCodexなどのコーディング支援ツールを使って機能を付加していきます。

デザインの「AIっぽさ」を消す工夫

プロトタイプの見た目が「AIっぽくなってしまう」問題への対処法も実践しています。デザインシステムを事前に定義してAIに読み込ませておくことで、Figmaとコードを往復させながら「無機質なAI生成物から洗練されたUIへ」と昇華させることができます。

クイックなデプロイと検証ループ

できたプロトタイプは社内環境にデプロイしてフィードバックを収集します。反応が強ければさらに強化し、弱ければ方向転換します。さらにAIエージェントにプロダクトを操作させてUXの改善提案を出させることで、半自動的に体験の改善サイクルを回すことも可能です。

動くプロトタイプが提案を変える

私たちが最も強調したいのが、提案の場面での動くプロトタイプの破壊力です。従来の提案はFigmaなどの静的な画面モックが主流でしたが、APIやバックエンドと繋がった「実際に動くプロダクト」を早期に提示することで、提案の説得力が劇的に上がります。

写真やお品書きを見るだけでなく、実際に試食しながら味付けをどこで変えるかを議論できるイメージです。フィードバックの粒度が劇的に向上し、「実現できそうか」から「どう使うか」という実践的な議論へと進化します。

弊社でも、投資教育アプリ、SVOD動画生成アプリ、アイデアソンチャットアプリ、記憶蓄積型対話アプリなど、実際の提案事例でも「7割方できているものを本番開発へ移行できるため、言った・言わないの要件定義のズレもなくなり、開発スピードも劇的に上がる」という成果につながっています。


第4章:社内ツール内製化──「痒い所に手が届く」4つの事例

荒金駿(PMチーム マネージャー)

なぜ内製するのか

私たちはサードパーティ製ツールの活用にとどまらず、業務の細かなニーズに応えるツールを自社で開発・運用しています。小さなツール群を迅速に展開することで、組織全体のAIリテラシー向上と生産性・効率向上を同時に実現するのが狙いです。

その事例を4つご紹介します。

① スライド生成アプリ

課題: 汎用AIツールでスライドを作ると、自社テンプレートが反映されず、脱字チェックも手作業になります。

解決: NotebookLMと同等のモデルを使いながら、自社テンプレートを事前に組み込み、構成案を確認してから生成できる仕組みを独自実装しました。画像ベースのスライドで発生しがちな脱字も自動検知して修正します。

効果: ブランドの一貫性を保ちながら、スライド作成の大幅な時間短縮を実現しています。

② カスタマージャーニー自動生成

課題: ペルソナや各シーンの状況を整理したカスタマージャーニーマップの作成は、手作業では時間と工数がかかります。

解決: ペルソナ・年代・シーンのステップ数を指定するだけで、各シーンの画像・行動・思考・ペイン/ゲインを含んだカスタマージャーニーを一気に生成し、PowerPoint形式で出力できます。

効果: 顧客理解や提案準備のスピードが大幅に向上し、議論の質も上がりました。

③ マトリクス型画像生成

課題: 「一発で思い通りの画像が出ない」というペインが根強く、方向性を決めるために何度も試行錯誤する手間がかかります。

解決: X軸(シンプルさ)とY軸(リアルさ)などの2軸を設定して複数の画像を一度に生成します。微妙なニュアンスの違いを並べて確認し、気に入ったものをダウンロードできます。最初は1軸で作ってみたのですが幅が出ず、2軸にすることで今の形に収まりました。頭で考えてから5分くらいで作りました。

効果: イメージ確認のプロセスが大幅に効率化され、クライアントとのビジュアル合意が早まりました。

④ デザインシステム作成ツール

課題: 最初から意図通りのデザインをAIに出力させるには事前準備が必要ですが、デザインシステムの定義自体がハードルになっていました。

解決: まず画像ベースでモックを作らせ、そこからデザインシステムを自動で起こし、それを生成AIに読み込ませてプロトタイプを作成します。最初のモックイメージをそのまま反映した形でプロトタイプが仕上がります。

効果: 「AIっぽさ」を感じさせないビジュアルのプロトタイプを、最初の工程から実現できるようになりました。


まとめ:AI駆動開発の核心は「仮説×スピード」

荒金: セミナーを通じて私が一貫してお伝えしたかったのは、AIの力を最大化するのは「仮説を立てる人間の力」だということです。コンサル時代の基礎である「仮説を立てる」力がAI時代に生きていると思います。仮説を立てて、AIを使って高速で試して検証していくスキルが、今まさに活きています。

文分: 1軸でダメなら2軸で試すといったように、机上の空論ではなく「仮説があるなら動かしてみる」姿勢が大切です。AIで初速を飛躍させ、多視点で磨き、素早く動く形に仕上げ、企画から実装・社内活用まで一気通貫で回す──それが私たちGNUSの考えるAI駆動プロダクト開発の姿です。

今すぐ取り組んでいただきたいこと

  1. AIへの指示に「方向性」を与える習慣をつける 「普通に作って」ではなく「この方向性で、この競合とは違う切り口で」という意図をプロンプトに込めることで、分布収束を人の力で回避できます。

  2. プロトタイプを早期に作り、触れる状態で議論する 要件定義の段階から動くものを作ることで、認識のズレを事前に潰し、開発スピードを劇的に高めることができます。Google AI StudioやClaude Codeを活用した「荒くても早い」サイクルを試してみてください。

  3. チームの「痒い所に手が届く」ツールを内製してみる 既製ツールでは対応できない業務のペインを洗い出し、小さなツールから内製を始めることが、組織全体のAIリテラシーと生産性向上につながります。

以上が、セミナーレポートとなります。ご視聴いただきありがとうございました。

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