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AIエージェントが創る新市場──2026年の勝ち筋と事業機会

2026/3/27

(本記事は2026年2月6日のウェビナー内容をもとにレポート記事にまとめたものとなります。)

2026年、AIはいよいよ「使うもの」から「選んでくれるもの」へと変わろうとしています。本記事ではCES 2026とNRF 2026のアップデート情報をまとめたレポートとなります。コンテキストデバイスの台頭、AIネイティブ化の加速、エージェントコマースの本格化、そして"AIに選ばれる"ための新しい考え方「AIO(AIオプティマイゼーション)」について、できるだけわかりやすくお届けします。


セミナー登壇者紹介

齋藤 信太郎 株式会社GNUS ディレクター。 AGC(iPhone向け新素材の立ち上げ、テスラモデルSの電装周りの立上げ)、東大発スタートアップ・Xenoma(IoTを活用した睡眠解析パジャマ・着用型EMS製品の事業構想)など、一貫して新規事業に携わってきました。現在はGNUSにてDX・新規事業開発のオファリングを担当しています。

GNUS(ヌース)について 

私が所属する株式会社GNUSは、電通グループの子会社として、DX(デジタルトランスフォーメーション)・新規事業開発およびソフトウェア開発を手掛けています。ラジコアプリのフルリニューアル、大手コンビニの次世代アプリのコンセプト策定など、サービスの企画段階から開発・実装まで一気通貫で支援するイノベーション領域に強みを持っています。

今回お伝えする内容は、私自身の仮説や見解が多く含まれています。ひとつの視点として参考にして読んでいただけると嬉しいです。


●今回お伝えしたいテーマ

  • CES 2026から見えてきた「コンテキストデバイス」の台頭と、AIをより賢く使いこなすための道筋

  • NRF 2026で主役となった「エージェントコマース」──AIが買い物を代行する時代の到来

  • AIに選ばれるための新しい考え方「AIO(AIオプティマイゼーション)」と、これからのサービス設計

●私が注目する主な論点

  • AIの性能よりも「情報の入力方法」こそが、AIをうまく活用できるかどうかを左右していると感じています

  • ソフトバンクの孫正義氏が提唱する「クリスタルインテリジェンス(会社全体を知るAI)」の実現は、2026〜27年が大きな節目になりそうです

  • AIによるショッピング代行に向けて、OpenAI・Amazon・Googleの3大プレイヤーの準備が整ってきました

●この記事を読んで持ち帰っていただきたいこと

  • AIネイティブカンパニーに必要な条件と、その鍵を握る「コンテキストデバイス」の活用のヒント

  • 2026年末に本格化するAIショッピング時代に向けて、今から準備できること

  • 「サービスの透明性」が、AIに選ばれるための新しい競争優位になるという視点


第1章:CES 2026から見えてきたコンテキストデバイスの動向

AIは賢い。でも、私たちが使いこなせていない

AIはすでに非常に優秀です。ただ、現状では多くの方がその能力を十分に引き出せていないと感じています。最大の原因は「コンテキスト(文脈・状況情報)の入力」です。AIに的確な答えを出してもらうには、「誰が・どんな状況で・何を求めているか」という背景情報を詳しく伝える必要がありますが、これが意外と手間のかかる作業です。

これを象徴するエピソードがあります。建築家ザハ・ハディドの事務所が、ザハのデザインだけを学習した専用AIと、誰でも使えるGPT・Geminiにきめ細かくプロンプトを設定したものを比べたところ、両者の出力にほとんど差がなかったというのです。つまり、AIモデルそのものの性能よりも、「いかに的確な情報を入力できるか」が出力の質を決めているということです。

CES 2026に集まった「常時オン」のデバイス群

CES 2026では、この課題を解消する「コンテキストデバイス」が相次いで発表されました。これらは、日常の会話や行動をリアルタイムで記録し、AIに自動で情報提供するウェアラブル端末です。

  • クリップ型:胸元などに付けて、会話や環境音を常時記録

  • ヘッドホン・イヤホン型:音声に加えて映像も同時に取得

  • 補聴器型:音声の記録とリアルタイム翻訳を同時に実現

  • メガネ型:Metaが主導し、最も普及が進んでいる分野

たとえば商談の音声を自動記録・整理するツールがすでに普及し始めています。こうしたデバイスが身の回りの情報をAIへ自動で届けることで、AIがより的確な提案をしてくれるようになります。このサイクルが回り始めると、次の章でお話する「企業全体がAIで動く世界」への扉が開いていくと思っています。


第2章:クリスタルインテリジェンス──AIネイティブ化の到達点

孫正義氏が描く「会社全体を知るAI」

ソフトバンクの孫正義氏は、「数万以上のAIエージェントが連携し、会社のことを何でも知っているクリスタルのようなAIが企業を運営している状態」を「クリスタルインテリジェンス」と定義しています。ソフトバンクのロードマップによると、2026〜27年に長期記憶を持つAIエージェントの本格運用が始まる予定だそうです。

OpenAIも同じ方向を向いており、目指すべき最終段階として「組織全体の業務を自律的に行えるAI(レベル5)」を掲げています。これらが示しているのは、AIが単なるツールではなく、企業の「頭脳」になっていく未来です。

AIを使いこなす企業と、そうでない企業の差は広がるばかり

この流れを加速させているのが、AI活用の有無による企業間の生産性格差です。たとえば、Microsoftでは従業員1人あたりの売上が約1.14M USD(約1.7億円)ですが、AIを中心に業務を設計したコーディングツール企業のCursorでは、その約10倍に達するとも言われています。

AIを業務の中心に据えた企業とそうでない企業の差は、今後さらに開いていくでしょう。どんな規模の企業にとっても、「AIをどう使いこなすか」は避けて通れない経営課題だと感じています。

まだ足りないのは「現場の知恵」のデータ化

では、クリスタルインテリジェンスを実現するために何が足りないのか。私は「暗黙知(現場の知恵や経験)のデータ化」だと考えています。AIはどれだけ賢くても、その企業ならではの文化・慣習・ノウハウが入力されていなければ、的外れな提案しかできません。

AIは十分賢いのですが、企業固有の文脈や現場の知恵が入っていないため、本当の意味でその企業に最適な答えを返せないでいます。全社員がコンテキストデバイスを身につけて日々の業務から暗黙知を蓄積していくことが、「会社全体を知るAI」への現実的な第一歩だと思っています。


第3章:NRF 2026から見えてきたエージェントコマースの台頭

2026年末、AIが「買い物を代わりにしてくれる」時代がやってくる

「エージェントコマース」とは、AIが利用者の代わりに商品を探して購入まで完結してくれる仕組みのことです。Z世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)を対象にした調査では、「買い物の際にAIに相談する」と答えた人が61%、「購入まで任せてもいい」と答えた人が50%にのぼります。また2025年のブラックフライデーでは、AIを経由したアクセス数が前年比693%増を記録しました。

NRF 2026(世界最大の小売業展示会)では、「2026年の年末商戦からエージェントコマースが一般化する」という見方が会場全体で共有されていました。私もこの波は確実に来ると感じています。

3大プラットフォームの準備が出揃った

今回、NRF 2026でGoogleが「UCP(共通購買プラットフォーム)」を発表したことで、主要3プレイヤーの体制が整いました。

プレイヤー

動き

OpenAI

2025年秋、ChatGPT内で商品購入が完結する機能を発表

Amazon

AIアシスタント「Rufus」を導入。活用したユーザーの購買率が60%向上、売上は約1.5兆円増加

Google

Shopify・Walmart・Visaなど主要企業と共同でUCPを策定。Gemini(GoogleのAI)内で購入が完結し、購買データはメーカーや小売業者に残る仕組みに

AI時代の商売で大切になること

エージェントコマースが普及していく中で、企業側に必要になるのは3点だと思っています。①AIが商品情報を正確に読み取れるようなデータ整備、②リアルタイムで在庫状況を把握できる仕組み、③需要や状況に応じて価格を柔軟に変えられる体制です。

将来的にはAIが問い合わせ対応から商品提案・購入手続きまでをワンストップで担い、お客様の満足度を高める役割を果たすようになるでしょう。


第4章:AIに選ばれるための「AIO」と新たな事業機会

「AIに選ばれる」ためには何が必要か

これまでビジネスでは「検索エンジンで上位表示されること(SEO)」が重要でした。しかしこれからは、「AIに良い商品・サービスとして選んでもらうこと(AIO)」が新たな競争の軸になると考えています。

AIは「ユーザーの期待を裏切りたくない」という性質を持っています。そのため、怪しいものや分かりにくいものは避け、信頼できる・明快な選択肢を優先的に推薦しようとします。この特性を踏まえると、AIに選ばれやすくなるための条件が見えてきます。

① AIが読み取りやすい情報の整備 GoogleのUCPなど、AIが理解しやすい形式で商品・サービスの情報を提供することが重要です。大手プラットフォームのルールに沿った形でデータを整えることで、AIに選ばれやすくなります。

② 購買実績データとの連携 WalmartがGoogleのAIに自社の購買データを提供し、信頼性の高い商品としてレコメンドされやすくしたように、自社の実績データをAIプラットフォームに連携させることが有効です。

③ わかりやすく透明なサービス設計 複雑な料金体系や隠れたコストがあるサービスは、AIが「ユーザーに勧めるには不確実すぎる」と判断して弾いてしまいます。通信料金・金融・保険・不動産など、これまで複雑さが当たり前だった業界こそ、シンプルで透明なサービス設計によって新しい市場を切り拓くチャンスがあると思っています。

透明なサービスを作るためには、コスト構造の見直しが不可欠

隠れコストをなくしたシンプルなサービスを採算ベースに乗せるには、業務そのものをAIで効率化してコストを下げることが前提になります。AIが選ぶ時代だからこそ、本当に良いものをより安く提供できる企業が勝ちます。価格や条件がわかりにくい市場ほど、透明性を武器にした新しいプレイヤーが参入する余地があると感じています。


まとめ:今すぐ取り組んでいただきたいこと

最後に、今回お伝えした内容を踏まえて、ぜひ今すぐ動き出していただきたいことを3点にまとめました。

  1. 全社員にコンテキストデバイスを活用してもらい、現場の知恵をデータとして蓄積する 「会社全体を知るAI」を実現するための第一歩として、まず日々の業務から情報を積み上げていくことが大切です。

  2. 2026年末のAIショッピング本格化に向けて、今から準備を進める 自社の商品・購買データをAIプラットフォームと連携させ、AIに選ばれやすい情報環境を整えていきましょう。

  3. サービスの透明性を高め、AIに「信頼できる選択肢」として認識されるブランドをつくる 複雑さや隠れコストをなくし、シンプルでわかりやすいサービスにすることが、これからの競争優位につながります。

今回の内容は私の仮説ベースの部分も多く、すべてが正解とは限りません。ただ、大きなうねりが来ていることは間違いないと感じています。ぜひ自社に引きつけて考えるきっかけにしていただければ嬉しいです。


本記事は、株式会社GNUSが2026年2月に開催したウェビナー「AIエージェントが創る新市場 2026年の勝ち筋と事業機会」の内容をもとに構成しました。
執筆:齋藤 信太郎(株式会社GNUS ディレクター)・GNUS編集部

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